ただ、一時的な浮気であれば、やはり欧米でも叩かれるはずですが、一方的に離婚できるので、日本のように大騒ぎになることはありません。

 日本はいろいろな意味で離婚しにくいから不倫が増えるわけですが、じつは日本の夫婦は欧米とは違い、愛情を追求せずに経済生活を最優先するから別れないという面が大きいのです。

 つまり日本では、欧米とは真逆のかたちで結婚における経済と親密性の分離が起こっているということなのです。

 ともあれ、「結婚しても愛情を感じられない人たち」と「結婚できない人たち」が増えているのですから、日本で不倫が注目されるのは、いわば当然のことかもしれません。

 ちなみに、私が代表をしている研究グループの最近の調査では、独身者のうち2.8%は既婚者と交際しています(男性1.2%、女性4.0%〈学術振興会科学研究費の助成による調査による[課題番号16H03699「未婚化社会における『結婚支援活動』の実証研究」]〉)。

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山田昌弘

山田昌弘

山田昌弘(やまだ・まさひろ) 1957年、東京生まれ。1981年、東京大学文学部卒。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。主な著書に、『近代家族のゆくえ』『家族のリストラクチュアリング』(ともに新曜社)、『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』(ともに筑摩書房)、『新平等社会』『ここがおかしい日本の社会保障』(ともに文藝春秋)、『迷走する家族』(有斐閣)、『家族ペット』(文春文庫)、『少子社会日本』(岩波書店)、『「家族」難民』『底辺への競争』(朝日新聞出版)などがある。

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