経済と親密性の分離

 このように欧米では、結婚における経済と親密性は分離しています。そして親密性の中でも、ドキドキとときめいたり性を楽しんだりすることを最優先する「恋愛感情最優先社会」が実現しているのです。

 逆に言えば、欧米では、結婚の中で気持ち、つまり恋愛感情が満たされるようにずっと志向していくわけです。だからたとえば、子どもを家に置いて夫婦でデートをしなければいけないし、セックスレスになったら離婚になるので、夫婦である限りセックスレスになってはいけないという考え方があるのです。

 恋愛感情最優先社会の欧米人から見ると、日本の結婚はとても「つまらないもの」かもしれません。

 結婚が不要になった究極のかたちは、イギリスの社会学者アンソニー・ギデンズによって提唱された「純粋な関係性」という理念でしょう。

 それは、お互いがお互いを好きであるから結びついて一緒にいる、コミュニケーションするという関係性です。その関係性は、どちらかが嫌になったら解消するということが前提になっています。

 また、ドイツの社会学者ウルリッヒ・ベックは「世界家族」という概念を提唱しました。お互いが遠距離で別々に生活しながら、スカイプやメールなどでコミュニケーションしている家族をそう名付けたわけです(ウルリッヒ・ベック他『愛は遠く離れて』)。これはつまり、なにも一緒に生活していなくても、お互いが心理的に選び合っているというだけで満足するような関係性です。

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経済と扶養で結びつく日本の夫婦