じつは、欧米でフェミニズム運動が強かった要因の一つには、こうした「経済生活の自立」すなわち自分で自由に使えるお金が欲しいという動機があります。逆に言えば、女性が夫の収入を全部コントロールしていることが、日本でフェミニズムがあまり浸透しなかった大きな理由だと思います。

 女性が働くことが必須の欧米は、逆に言うと、お金を稼がない女性は男性の言うことをきかなければいけないという社会でもあるわけです。だからお金を稼がない妻が多数派の日本では、逆に夫が妻に頭を下げておこづかいをもらうので、「男の言いなりにならない」というフェミニズムが浸透しにくい。これは当然のなりゆきでもあるのです。

 また欧米では、いわゆる女性差別が日本以上に禁止されています。離婚する・しないにかかわらず、まず自分で働くというのが当たり前だし、未婚・既婚・離婚にかかわらず、女性が男性と同等に働けるようになっています。そして、特にヨーロッパでは、子どもを持つ人および子どもに対する社会福祉が整っています。

 つまり、生活を保持するのにお互い配偶者に一方的に頼らないし、頼ることができないのが欧米の社会なのです。要するに欧米では、男性は女性に家事や育児を頼らない・頼れないし、女性も経済生活を頼らない・頼れないという意識が浸透する中で、結婚が不要になっていったわけです。

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経済と親密性の分離