7月19日に荒川消防署が実施した防災訓練で、消火器で放水をする地元の保育園児たち。火事の煙を疑似体験する「煙体験」も行われた(撮影/編集部・野村昌二)
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 今年は関東大震災から100年の節目の年。首都圏を襲う可能性がある「首都直下地震」に備えるためにも、改めて防災について考えてみてはいかがだろうか。AERA 2023年8月28日号より。

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 私たち一人ひとりは、来たるべき地震にどう備えればいいか。

 首都直下地震で命を失う主な要因は、揺れによる建物の倒壊と火災だ。まず、耐震化されていない住宅の耐震補強を進める。火災への対応は、避難する際にはブレーカーを落とし、大きな揺れを感知すると自動的に電気を止める感震ブレーカーを取り付けることが効果的とされる。もちろん、初期消火には消火器も欠かせない。

 東京大学の平田直(なおし)名誉教授(地震学)は、「自分でできることから始めることが大切」と指摘する。

「家が倒壊しなくても、食器棚や本棚が倒れてきてけがをしたり亡くなったりする人は少なくありません。そのためにも、まず自宅の家具を固定してほしい。全ての家具を固定するのが大変であれば、過ごす時間が最も長い寝室の家具だけは固定し、家具の下では寝ないようにする。できることから始める。これが重要です」

 その上で、水と食料などの備えが大切という。人間が1日に必要な水は3リットル。地震が起きて72時間(3日間)は、命を守るための救命活動が最優先されるため少なくとも3日分、できれば1週間分を備蓄する。携帯トイレは重要。高齢者や乳幼児がいる場合は、常用薬やミルク、おむつなども必要と話す。

AERA 2023年8月28日号より

「地震による被害を減らす基本は、自分の命は自分で守る『自助』です。しかし、高齢者や障害のある人たちは限界があり、地域における『共助』も大切。地域のコミュニティーを活性化させ、普段から付き合いをすることが地域の防災力を高めることになります」(平田さん)

 政府の中央防災会議委員を務めた、防災教育が専門の常葉大学の重川希志依(きしえ)名誉教授は、「防災教育」の必要性を説く。

「地震への備えや地震が起きた時に行動を起こすことの大切さはみんな知っています。しかし、それを実行に移せなければ、何の役にも立ちません」

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