火災現場にいった3人は、着くと砂をかけて消火につとめ、消防署と情報を交換しながら、状況の推移を報告してくる。台風が通過したときで、風雨で高温になっていたナトリウムの温度も下がり、電池は半焼くらいで収まった。近隣への謝罪、原因究明のための現場保存などは、3人のリーダー格に任せる。

原因究明の間は損害賠償を覚悟で全てを使用停止に

 三菱マテリアルへの謝罪はもちろん、全国のNAS電池ユーザーへの説明に、自ら赴いた。それが、事業責任者が果たすべき任務。チームの面々には、それぞれの役割があり、その務めをそれぞれが果たす。小学校時代から経験したボーイスカウトの活動と高校まで続けたサッカーが、「役割分担」の大切さを教えてくれた。

 その学びが、このときも活きた。だから、ボーイスカウトやサッカーが自分のビジネスパーソンとしての『源流』と思っていたが、どうも違う。何でも、自分で選んだ道へ、自由に進ませてくれた父。1991年に64歳で亡くなったが、この父から受け継いだ選択の柔軟さこそが『源流』だ。

 燃えたNAS電池は、別のトラブルから改善し、電気のショートは起きないようにしてあった。だから、火災は起きない、と考えていた。原因は、様々なデータを調べたが、分からない。そこで、決断する。すべてのユーザーに使用を止めてもらい、全部回収する。社内の誰も思いつかない選択だ。

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