六本木ヒルズの地下には巨大なガスエンジン発電機が5基あり、地震後も停電しないという=東京都港区(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 関東大震災のころと比べて都市の姿は様変わりし、タワーマンションに代表される集合住宅の形でタテに伸びて密集度を増した。南海トラフ地震が襲う名古屋や大阪の都市部も同様だ。高層階で生き延びるために必要な設備とは。AERA 2023年8月28日号より。

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 南海トラフ地震で、最大震度7、死者約6700人が想定される名古屋市。約9割の世帯で停電し、復旧には1週間以上かかると見られている。

 今年春、JR名古屋駅近くに高さ149メートル、42階建てのタワーマンション「NAGOYA the TOWER」が完成した。年に3、4本ずつタワーマンションが増えている名古屋で、初めて中圧ガス管と接続したとPRされている。ガスを用いた自家発電機で、非常用エレベーターをずっと動かすことができるというのだ。

「防災でも名古屋でトップを目指しました。災害対策に関心のあるお客さんに評価してもらっています」と販売する総合地所の担当者はいう。

 エレベーターが止まれば、水や食料を地上から運びこむことも、地上の仮設トイレに通うことも難しくなる。非常用エレベーターを動かす自家発電機を持っていても、燃料が数時間分しか備蓄されていない建物が多い。中圧ガス管なら、燃料切れの心配がないというのだ。

 都市ガスを家庭に届けるガス管は、高圧・中圧・低圧と順に枝分かれしていく。このうち、高圧・中圧のガス管は、大地震に耐えられる構造で、基本的に供給は途絶えないとされている。東京都の渋谷区役所(2019年築)など災害対応拠点でも、災害時の発電に使われている。

 高層階で生き延びるにはエレベーターは必須となる。

 大阪市が認定する「防災力強化マンション」は、11階以上の場合は停電時でも3日間以上使えるエレベーターや、高層階にも飲料水や食料の倉庫を設置することなどの要件を一つ以上満たすことを定めている。

 同様に東京都が公開している「東京とどまるマンション」の登録には、停電時でもエレベーターの運転や水の供給に必要な電力を、自家発電設備や太陽光発電と蓄電池などで確保することを求めている。

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