この年の決算資料では、殺虫剤市場について「集中豪雨や大型台風などの自然災害、また夏場の記録的な酷暑を主な要因として、市場規模が過去10年間で最低水準となる極めて厳しい状況」(アース製薬)、「7月以降の猛暑による天候不順の影響により市場全体では前年を大幅に下回って推移」(フマキラー)などとそれぞれ説明し、売り上げが減った理由の一つに猛暑を挙げた。
いずれも海外の売り上げや蚊以外の対策商品を含むため蚊だけが理由とは限らない。だが、猛暑が響いたのは確かだ。
ただし、その後は猛暑日と業績の関係は読みにくくなる。
この10年で、前述した18年に次いで猛暑日が多かった20年は、アース製薬、フマキラーとも、前の期に比べて両部門の売上高を伸ばしている。蚊の活動は猛暑でも鈍ることはなかったのだろうか。
一方で、猛暑日が20年とほぼ同水準だった22年は、アース製薬の虫ケア用品部門が前の期に比べて落ち込んだのに対し、フマキラーの殺虫剤部門は増え、両社で異なる結果だった。フマキラーの決算資料によれば、この年(23年3月期)の売り上げが増えたのは、海外の売り上げ増や円安によるその押し上げ効果が大きかったという。ただ国内向けは、アース製薬と同様に不調だったとしている。
ということは、この年は国内の売れ行きが抑えられた要因の一つに猛暑があったとみることもできそうだ。