では今年はどうか。フマキラーの調べでは、蚊を対象とした国内の殺虫剤市場は、5~6月に気温が上がらなかったこともあり、足元まで昨年に比べてやや減少している。
しかし、夏場に限ると昨年を上回る水準で推移するという。前出の広報担当者は言う。
「電池式や電気式の蚊取り器や蚊取り線香、蚊よけスプレーなど主に屋内用の商品は前年比微減である一方、虫刺され用の塗り薬などは伸びています。猛暑になると売れ行きが鈍るという傾向は、今のところつかみにくいというのが正直なところです」
ゴキブリやハエ、ダニ向けといった蚊以外も含めた殺虫剤全体の市場は前の年より4%程度伸びている。とくにゴキブリ関連の商品が好調だという。担当者は続ける。
「猛暑日でも一日中暑いわけではありません。朝方や夕方の気温は比較的低い。さらに猛暑日が多い年は、残暑も長く続く傾向があります。そうなれば、蚊関連の商品に対する秋に入ってからの需要は、かえって例年よりも期待できる。猛暑日が多いからといって、その年の売り上げが必ずしも落ちるとは限りません」
業績データは公表していないが「KINCHO」のブランドでおなじみの老舗メーカー、大日本除虫菊の広報担当者も次のように言う。
「猛暑だからといって、その年の蚊関連商材の売り上げが悪くなるということは一概には言えません。過去に猛暑と言われた年でも、春から秋までシーズンを通して猛暑だったわけでないことを考えると理解してもらえるでしょう」
年度初めの見通しでは今期、アース製薬、フマキラーの両社とも殺虫剤関連の売り上げ増を見込んでいる。気象庁のデータをみると、この数年の間に猛暑日がにわかに増えている。猛暑と商品の売れ行きとの関係は思っていたよりもなさそうだ。
(AERA dot. 編集部・池田正史)