花巻東(岩手)の佐々木麟太郎選手(撮影=写真映像部・東川哲也)
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花巻東(岩手)の千葉柚樹主将(撮影=写真映像部・東川哲也)

 目の奥に、覚悟が透けて見える。

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 取材陣に囲まれる佐々木麟太郎は、何度となく同じフレーズを口にするのだ。

「勝ちにこだわって」

「勝つことだけを意識して」

「一戦一戦、勝利だけを考えてやっていきたい」

 宇部鴻城(山口)との初戦、雨天中断もありながら激闘となったクラーク国際(北北海道)との二回戦、そして、チームで16安打を浴びせて「打ち勝った」と言える智弁学園(奈良)との三回戦と、勝ち上がるたびに「勝利」への言葉は熱を帯びる。大会屈指のスラッガーに注がれる過剰な目は、夏の聖地でのホームランを期待するのだろう。ただ、佐々木麟太郎はブレない。チームの勝利につながる一打だけを求め続けるのだ。

 たとえば、智弁学園戦。1回表一死一塁で巡ってきた打席では、「センターから左へ打つことを意識している」という今大会の打撃に対する思考を象徴するかのように左前へ運んで走者を得点圏に進めた。一死満塁となり、千葉柚樹に左越え二塁打が飛び出して花巻東が2点を先制した。佐々木麟太郎の2打席目、3回表の一死無塁の場面では強烈な中前安打を放つ。再び飛び出す千葉の適時二塁打の呼び水となった。そして、6回表の3打席目には二死一、二塁から中前適時打を放ち、試合を優位に運べる5点目を叩き出す。積み重ねた3本のヒットには、勝ちへの渇望が滲み出ていた。

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