日本男子のホープ・三浦佳生は今季、難しいショートプログラムとハードなフリーに挑む。
昨季の四大陸選手権と世界ジュニア選手権を制した18歳の三浦は、疾走感あふれるスケーティングと、そのスピードを落とさずに跳ぶダイナミックなジャンプが強みだ。まだ粗削りな部分はあるものの、スケーターにとって何より大切である滑りの速さを持っている三浦は、これから様々なプログラムに挑戦することで成長していく段階にある。
今季のショートプログラム『This Place Was A Shelter』は、三浦とは初めて組むブノワ・リショー氏が振付を担当している。世界選手権2連覇中の北京五輪銅メダリスト・坂本花織の表現面での成長を支えたリショー氏の振り付けは、難しいことで有名だ。『This Place Was A Shelter』も例外ではなく、5月上旬のアイスショーに出演した際、三浦は「あまりにも、すごく難しいプログラムになっている」と吐露している。そのアイスショーで滑ったエキシビションプログラムをショートの構成にする“保険”をかけていたほど、三浦にとって今季のショートは手強いようだ。
ただ、この難しいショートへの挑戦は三浦自身の意志によるものでもある。リショーからはコンテンポラリー(現代的なダンス)風の振り付けになることを予告されていたポスト・クラシカルの曲を、三浦は自分のイメージと違うことを知りつつ、あえて選んだという。目にもとまらぬ速さで滑ることができる一方で、表現面では発展途上にある原石がリショーの難解な振付で磨かれていく過程は、今や世界女王となった坂本と重なるところがある。
アニメ『進撃の巨人』の曲を使う今季フリーを手がけたシェイ=リーン・ボーン氏も、三浦にとっては初めて依頼する振付師だ。羽生結弦の『SEIMEI』を振り付けたことで名高いボーン氏に、プログラムの曲が使われる場面の動画を三浦が見せながら創り上げたという。6月末にアイスショーでこのフリーを披露した際、三浦は「自分も調査兵団の一員として戦っていくというイメージ」と説明した。