症例検討会に参加するのは、外科医や内科医、放射線科医のほか、看護師や薬剤師が加わるのはもちろん、同院ではがん治療のチームに身体疾患を熟知している精神科医が必ず加わる点も大きな特徴。これは数字には出にくいものの、患者の安心感を高めるうえでの意義は大きい。

「高齢の患者さんは睡眠薬を常用しているケースが多く、術後にせん妄(注意力、思考力の低下などの意識の混乱)を起こすリスクが高い。そこで精神科医が術前から睡眠薬の量や種類を調整することで、せん妄が起きる危険性を下げてくれているのです。これは患者さんだけでなく外科医にとっても大きなメリットになるし、入院日数を短くすることにも貢献しています。せん妄が生じたときでも術前から精神科医から患者さんに情報提供することで、患者さん自身が慌てずに看護師に報告してくれるなどの効果を実感しています。また、がんの患者さんは心理的な大きな負担が加わるので、メンタルの専門家が治療チームにいることの安心感は計り知れません」

高度技能を持つ外科医の数で「中国・四国トップ」に

 福山市民病院は、2009年から日本肝胆膵外科学会の「修練施設」として認定されています。この認定には、高難度の肝胆膵外科手術を年間50例以上実施する「A施設」と30例以上実施する「B施設」があり、同院は「A施設」に分類されます。

 大学病院ではなく、地域の市民病院がこうした認定を得て、高度に専門特化された外科治療をおこなうには、そこで働く医師の技量にも高い水準が求められます。

 門田医師は、2014年に日本肝胆膵外科学会が認定する「高度技能専門医」の資格を取得しました。資格取得当時、資格保持者が全国で90人という状況で、同院にこの資格を持つ医師は門田医師が2人目、「肝胆膵外科高度技能指導医」の資格保持者を含めると5人となり、この数字は中国・四国地区で最多を誇るものとなりました。

 このように、医師の力量と病院の実力が高度な水準で融合した結果、福山市民病院は全国有数の肝切除術の実績を残すことができるようになったのです。

 診療科の垣根を越えるフットワークと、世界が認める高度な技術によって、医療の地域間格差を解消する取り組みが、ここ福山で実践されています。

(取材・文/長田昭二)

【取材した医師】

福山市民病院 外科科長 門田一晃(もんでん・かずてる)医師
1977年広島県府中市生まれ。2003年東京慈恵会医科大学卒、NTT東日本関東病院、国立がん研究センター東病院、東京大学医学部附属病院を経て、13年から現職。日本内視鏡外科学会技術認定医、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医・評議員、米国外科学会フェロー、日本消化器外科学会外科専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、Da Vinci surgical system 術者認定、他。
福山市民病院:広島県福山市蔵王町5-23-1

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