肝がんは、がんの中でも「再発」のリスクが高いという問題点があります。これについて福山市民病院では、「がん地域連携パス」という診療計画書を使った医療連携で対応しています。

「手術の後は、その患者さんのかかりつけの医療機関を受診し、定期的なフォローを受け入れてもらいます。この大元になるのが“がん地域連携パス”。これは、がん診療連携拠点病院(ここでは福山市民病院)と地域の開業医の間で作成したパス(診療計画書)を元に、双方の医療機関が共同して診療を継続していくというもの。ふだんの採血や超音波検査は地域のクリニックで対応してもらい、4カ月に1度のCTやMRI検査などは福山市民病院でおこなうことで、定期的かつ継続的なフォローアップを、クリニックと病院が自然な流れの中でおこなえる仕組みです」

 転移性肝がんについても積極的な取り組みを見せます。

「転移性肝がんが見つかった場合は、可能な限り切除を目指しますが、それが困難なケースでは、薬物療法でがんを小さくしてから手術に持ち込む“コンバージョン手術”も検討します。また、がんが血管に浸潤している場合は、血管を切除すると肝機能が悪化する危険性があります。そこで首や足の血管を移植して肝臓の血管をつなぐ“血管再建術”をおこなうこともあります」

診療科の枠を超え、必要な情報をスタッフ間で共有

 大都市の病院に対する引け目は感じていない。むしろ、市民病院ならではのチームワークの良さが同院の医療水準を高め、患者メリットの向上に役立っている、と門田医師は分析しています。その代表的な取り組みが、先に触れたカンファレンス(症例検討会)です。

「当院はとにかく診療科の間の垣根が低い、というより垣根がないんです(笑)。すべての診療科の医師が一つの同じ医局にいるので、分からないことがあればすぐに、簡単に相談できる。加えてがんの症例には、症例検討会を毎週2回開催し、すべての症例について、その患者さんに関わるすべてのスタッフが、必要な情報を高いレベルで共有しています」

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精神科医が必ず加わる点も大きな特徴