――今回の追悼式で、山下さんが注目したポイントは何かありますか?

 陛下のおことばにあった、「これからも、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います」という一文です。この表現は平成以前にはなく、コロナへの言及をきっかけに新たに加えられたものです。

 今年はコロナには触れられなかったにもかかわらず、この表現はあえて残されている。「コロナ禍の後もまた新たな苦難に直面するかもしれませんが、平和と幸せのために、今後も皆で手を取り合って乗り越えていきましょう」という、未来を見据えたメッセージだと感じました。陛下オリジナルの“令和流”の文言として、来年以降も引き継がれていくのではないでしょうか。

――“令和流”は、未来志向ということでしょうか?

 私はそう感じています。「過去を忘れないことは大事だけれど、過去にとらわれ過ぎず、未来にもっと目を向ける」という陛下の姿勢は、今年6月のインドネシアご訪問のときにもひしひしと伝わってきました。

 ご訪問中、午餐会で予定されていた陛下のおことばが、インドネシア大統領側の提案で取りやめになるハプニングがありました。おことばは、日本という国を代表した公式の発言。まず間違いなく、「先の不幸な戦争への反省」というような内容が入っていたでしょう。しかし大統領は、「戦争についての反省より、これからの両国の関係性を見据えた、打ち解けた会にしたい」とお考えになったのではないでしょうか。

次のページ
昭和天皇から戦争の話を聞いた最後の天皇