クローズアップされたのは、8回表、1点を追う花巻東の先頭打者・千葉翔太が四球で出塁し、2死二塁となった場面。

 次打者・多々野将太のとき、二塁走者の千葉が両手を左右に振るような動作を見せた。鳴門の捕手・日下大輝がミットを構える位置を見て、内角か外角か知らせているようにも見えた。

 サイン盗みは98年の準々決勝、横浜vsPL学園がきっかけで、同年12月の日本高野連全国理事会で禁止されている。「走者がサインを出してます」と日下が球審に訴えたことから、試合が中断され、球審が二塁上の千葉に注意した。

 5対4の逆転勝利の試合後、千葉は注意されたことについて「よくわからなかった」と報道陣に答え、佐々木洋監督も「わざわざズボンを触って、手でサインを出すなんてことはないです」と疑惑を否定した。

 その一方で、サイン盗みはしていなかったが、紛らわしい動作をすることによって、相手にプレッシャーをかけようとした陽動作戦だったのではないかと推測する声もあった。

 真相はどうあれ、サイン盗みだけを禁止しても、これで“一件落着”ではないということを痛感させられたファンも少なくなかったはずだ。(文・久保田龍雄)

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