国土面積の0.6%にすぎない小さな島に、日本の米軍専用施設の7割が集中している。沖縄ばかりに基地負担を押し付けたことにおいて、昔もいまも自民党の責任は重いと指摘するのは、ジャーナリストの安田浩一氏だ。基地を考える必要のない「本土」と、切実さも被害も無視される沖縄。かつて自民党議員の中には、沖縄に思いを寄せ、沖縄のために奔走する者が少なくなかった。安田氏の新著『なぜ市民は"座り込む"のか――基地の島・沖縄の実像、戦争の記憶』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、再編集し紹介する。
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なぜ毎年、沖縄に足を運ぶのか――。
元自民党幹事長の古賀誠さんに訊ねたら、意外な言葉が返ってきた。
「怖いからです」
真意をつかみ損ねて戸惑う私に、古賀さんはこう続けた。
「戦争を忘れてしまうのが怖いんです。いまの平和が戦争の犠牲の上に成り立っていることを忘れてしまうのが怖い。だから沖縄に行くんです」
その「怖さ」は自身に向けられたものだった。
古賀さんは父親の顔を覚えていない。父親は古賀さんが2歳のときに出征した。