したがって、彼が国会で質問したくらいでは、政策が変わることはないのだ。

 ということは、他の誰かが影響力を行使したのではないかという話になる。

 本件について一番影響力があるのは経済産業相だ。当時は萩生田光一氏だった。

 そこで、一つ指摘しておきたいことがある。

 それは、前述の3件総取り発表があった21年12月24日から正月休みを挟んですぐの22年1月7日のことだった。

 萩生田経産相が、「他のプロジェクトの人たちにも今後参加しやすいような仕組みというのは、ぜひ今回の結果を踏まえていろいろと検討してみようかなと思っている」と発言した。

 事業者選定のための指針をより多くの事業者が参加しやすいものにするという事実上の見直し方針を表明したのだ。

 この表明は、あまりにも唐突だった。クリスマス前日から、ワーキングデイではわずか数日しかなかったのに、どうしてこんな重要な方針が決まったのか。私の官僚時代の経験から言っても、そんなことが起きるのは、極めて稀だ。大臣自身がそう考えたか、あるいは総理からよほど強い指示があったかのどちらかとしか思えない。

 その後、もう一つの驚きの展開が待っていた。実は、第2弾の公募が22年すでに始まっていたのだが、これには従来の指針が適用されることになっていた。指針を見直しても、適用はその後の公募からになるというのが業界を含めた関係者の当然の理解だった。

 ところが、3月18日に萩生田経産相が、見直し後の指針を第2弾の案件にも適用するために、公募の締切日の6月10日を延期すると発表したのだ。レースが始まってから、ルールを変更するからレースを中断するというのは禁じ手だが、まさにそれを萩生田氏は使ったわけだ。

 普通の官僚なら、こんな異例のことをやる裏には何か不正があるのではないかと疑いを持つ。これを聞いた時、私も何かあるなと直感的に思った。政治的な意図がなければできない芸当だからだ。

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