報道が事実だとすれば、これは典型的な贈収賄事件であり、秋本氏は逮捕されるだろう。自民党や岸田文雄首相にとって大きな打撃になるのは確実だ。
ただ、本件には、それにとどまらない政治的な意味がある。秋本氏は、自民党の中でも珍しい脱原発派で、同じく脱原発派で有名な河野太郎デジタル相と非常に親しいと言われている。そこで、原発推進派が、ここぞとばかりに本件を河野太郎叩きに利用しようと動き出した。ネット上では、秋本氏はそれほどの大物政治家ではないから、指針改訂への影響力は限定的だったはずで、実は大物政治家の河野太郎が裏で動いていたというような言説が溢れている。マイナンバーカードの問題で人気に翳りの見える河野氏をさらに叩いて次期総理候補から引き摺り下ろしたいという安倍晋三元首相を礼賛する人たちの動きが特に活発に見える。
一方で、これに反発する形で、再エネ推進・脱原発派のリベラル層からは、再エネ潰し・脱原発潰しのための国策捜査だという陰謀論めいた声も広がっている。
私は、この陰謀論には与しない。だが、検察当局が、反原発議員を捕まえるのであれば政府与党からの反発は小さく、ハードルは低いと見ている可能性は十分にある。現職国会議員を収賄で立件できれば、検察官としては最高の栄誉だ。彼らの鼻先にハードルの低い案件をぶら下げれば、誰でも飛びつくという心配はないとは言えない。
では、秋本議員の裏に河野太郎がいたという説はどうだろう。私は河野叩きの誘惑に駆られた人たちの暴論にすぎないと見ている。
なぜなら、河野氏は、常日頃、日本の再エネの価格が高いことを問題視していたからだ。私自身、落札結果が出た直後の22年1月に、彼が予想外の低価格で落札されたことを手放しで喜んでいるのを目にした記憶がある。安すぎて参入できないという業界の声が高まっていた時期にだ。
ここから先は、報道やネットで出ていない話だ。
秋本議員はまだ若く、しかも自民党では嫌われ者だ。彼に言われて官僚が動くことはない。