浜松市内を行進する浜松開誠館中学・高校の生徒たち(当時)=2019年12月6日、浜松市(写真:朝日新聞)

■「野球ができなくなるかもしれない」という危機感

 そして、 同年12月にも、同校の中学、高校の生徒400人が気候危機の深刻さを訴えて、浜松市内をデモ行進している。

 生徒たちは制服姿で「グローバル気候マーチ」と銘打ち、気候危機への対策、行動を求め、学校近くを約2キロ、1時間弱にわたって歩いた。「STOP温暖化」「気候は変えず私達が変わろう」「Save the Earth 地球を守れ!」「Save the Future! 未来を守れ!」などと書かれたプラカードを掲げていた。

 このデモ行進には野球部員も参加しており、「暑くて野球ができない」と訴えた。この様子を、朝日新聞は次のように伝えている。

「『暑さから野球を守ろう!!』。そんなメッセージを掲げたのは、高校2年(当時)で野球部主将の西川侑希(ゆうき)さん(17)。真夏のグラウンドは40度もの暑さになる。集中力を保ちづらく、真昼の時間は練習を避ける。熱中症への不安から体調管理に気を使う。さらに暑くなったら、野球ができなくなるかもしれない……。『一人でも多くの人に気候のことを考えてほしい』。(略)生徒たちの熱意を学校は受け止めている。同校は、使用電力をすべて再生可能エネルギーでまかなう意思を示すネットワークに参加。建設中の体育館の屋根へのソーラーパネル設置や、校内の自動販売機のペットボトル飲料を紙製品などに置き換えることを考えている。高橋千広校長は『テストで点数をとって良い大学に入れば幸せ、という時代ではない。生徒にとってマーチの参加は、課題を考えて人と協力し、行動する機会になったと思う』。今後、市内の別の学校にもマーチの参加を呼びかけたいという」(「朝日新聞デジタル」2019年12月15日)

 中学・高校で全校生徒約1000人がデモを行うというケースはきわめてめずらしい。中学・高校生が社会と向き合い、社会に向かって広く訴える「社会運動」と言っていい。

 過去にこのような学校単位での大規模な運動はあっただろうか。

 1960年、安保闘争のさなか、長野県松本深志高校の教員・生徒約1300人が「民主主義を守れ」というデモを行っている。同校の学校史にその記録が残っている。

「……応援団長が墨黒々と大書した七本の大きな横断幕のプラカードを掲げ、『人間愛に結ばれた美しい世の中にしてください』『民主主義を尊重する平和な社会にしてください』『安心して勉強できる明るい社会にしてください」という三種の標語に、平和をもとめる『政治の倫理』への精一杯の訴えと、それを具現して行くべき将来への自分たちの覚悟とを表明していた」(『長野県松本中学校・長野県松本深志高等学校九十年史』1969年)

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