Sibi George/1967年生まれ、南インド・ケララ州出身。これまでスイス、クウェートなどのインド大使を歴任。インタビューの日は今夏の最高気温を記録した猛暑日。「東京は、インドより暑いと感じる」と笑う(撮影/写真映像部・松永卓也)

 中国の人口を抜き、世界1位になったインド。名目国内総生産(GDP)は世界5位だが、コロナ禍での落ち込みからの回復も目覚ましく、さらなる発展が期待されている。注力する政策や今後の日印関係について、シビ・ジョージ駐日大使が本誌単独インタビューに答えた。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。

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──昨年9月、安倍晋三元首相の国葬にインドのモディ首相が参列。安倍氏との個人的な交流の深さがあったとされているが、インドと日本が友好的な関係にあることを印象付けた出来事だった。今後の日印関係はどのように発展するのか。

 日本とインドのパートナーシップは、アジアと太平洋地域はもちろん、その外の地域にとって、安定と安全、繁栄を確保する上で特に重要です。14年、モディ首相は安倍首相(当時)と会談し、日印関係を「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」へと格上げさせました。それは岸田文雄政権下でさらに強化されています。

 ここ数年、インドと日本の関係に明らかな変化が起きています。「政府」対「政府」だけではなく、「企業」対「企業」にシフトしているのです。

 現在、インドにはスズキやトヨタをはじめとする約1500社の日本企業が進出しています。目標は、これを1万5千まで増やすことです。そのためには、大企業だけではなく、中小企業にもインドに来てほしい。7月、在日インド大使館内に「中小企業促進室(SМEFC)」を開設しました。

──インドは貧富の差が大きい。この現状を打破する政策が目立ち始めた。

 インド政府は、貧困層への対策に力を入れています。例えば、コロナ禍では、生体認証システムなどを活用し、貧困層の8億1千万人に直接食糧を給付。農村部にいたるまでくまなくデジタル化を進めることによって、ほぼ全国民が銀行口座を持つようにもなりました。貧困層であっても、新たなビジネスができるチャンスが生まれています。

 携帯電話も同様です。いまインド国内の携帯電話ユーザーは12億人に上ります。これまで経済活動に参加できなかった貧困層も、オンラインで手軽に教育を受けることができるようになりました。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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