普通の酒好きは、急激なスピードで依存症へと引き込まれていく。倉持院長がこう指摘する。

「どんなお酒でも飲み過ぎてはいけませんので、ストロング系でなければ依存症の危険性がないということでは決してありません。それでも、ストロング系が高リスクなのは明白で、専門医の間では長く問題視されてきました。にもかかわらず、いまだに悪ノリのような商品まで開発されてしまっています。売らんがための商品開発や宣伝の陰で、悲惨な目に遭っている人がたくさんいることは知っていただきたい事実です」

 企業側が売るのをやめればいいと考えることもできるが、話はそう単純ではないようだ。倉持院長は、こうした商品が生まれた構造的な問題にも触れる。

仕組みを考える必要がある

 ビールの酒税が高かったため、低価格で売れるものを求めて各社が開発したのが発泡酒。その発泡酒が人気となって発泡酒の酒税も上がった結果、同じ流れで酒税が安いままだったストロング系に注力するようになった、との指摘があるのだ。

「販売側の責任だけを問うのではなく、アルコールの量に比例して課税する制度にするなど、安くて手軽に買える高アルコール商品が生まれにくい仕組みを考える必要があるのではないでしょうか」(倉持院長) 

 アルコール依存に陥れば、本人が苦しむだけではなくその家族にも大きな負担がかかる。前出の加納さんも、ストロング系に気軽に手を出し「これだよ~」とまどろんだあの夜、その先に苦しむ事態が起きようとは夢にも思わなかったのだ。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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