写真はイメージです(Getty Images)

 夏の暑い時期、冷たいビール、サワーでのどをうるおす機会も増えるだろう。ただ、家飲みをする場合は注意も必要だ。アルコール度数の高い「ストロング系」商品が登場して久しいが、最近は主流の度数7~9%を上回る12~13%の高アルコール商品まで販売されている。安く早く酔えるからと気軽に飲み続けた結果、いつのまにか飲む量がコントロールできなくなりアルコール依存症に陥った事例も少なくない。「依存症に陥る強力な着火剤だった」と振り返る、当事者の女性に話を聞いた。

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 首都圏で実家暮らしをしている加納早織さん(41=仮名)は、美術系の学校を卒業し、広告会社などで働いてきた。服装もおしゃれで、雰囲気は年齢より若く見える。はきはきと話す彼女の姿に、アルコール依存の面影は感じられない。

 だが、わずか半年前。朝から晩まで酒に溺れていた加納さんは、翌朝、自宅のベッドで血を吐き救急搬送された。アルコールの大量摂取による急性膵炎(すいえん)と診断され、その後約1カ月間入院した。

「毛布をつかんで、息が苦しくてもがいたのは覚えています。家族が『救急車を呼ぶね!』と言っているのは聞こえましたが、答えることすらできなくて……」

 加納さんはその時のことをそう振り返る。

 20代の学生時代、飲酒は友人たちと食事をする際にたしなむ程度だったという。社会人になり、仕事で怒られるなどしてストレスがたまったときなどは、同僚たちと憂さ晴らしで飲みに行き、酔うことが徐々に増えていった。とはいえ、よくある社会人の「ヤケ酒」の範囲内だった。

 “転落”するきっかけは30代に入ったころ。しばらくの間、酒からは遠ざかっていたが、派遣社員として新たに勤めた職場で、仕事や人間関係のストレスにさらされるようになり、酒に頼りたくなった。久しぶりに飲もうと飲食店に入ったが、酔った男性客にしつこく話しかけられ、余計ストレスがたまった。

 誰にも邪魔されない「家飲み」をしようと決め、初めて手を出したのがストロング系だった。コンビニで350ミリリットルの缶を1本だけ買って家で飲んだ。それを選んだ理由は、値段が安いのにちゃんと酔えそうで、なによりおいしそうだったから。缶のデザインも気に入り、女性一人で購入する抵抗感もなかった。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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朝からストレートでウォッカを飲むまでの経緯