加納さんも、当事者としてこう感じている。

「最初に飲み方がおかしくなったきっかけも、スリップ(再飲酒)したきっかけもストロング系だったことを考えると、依存症に陥る強力な“着火剤”になるものだとは感じています。ストロング系をきっかけに、深みにはまっていく人や、さらなる深みに落ちていく人。さらに、そこから脱出しかけている人をまた深みに引き戻してしまう危険性があることは間違いないです」

 アルコール依存症専門の心療内科「さくらの木クリニック秋葉原」の倉持穣院長が、こう指摘する。

「臨床的な実感としてですが、ストロング系がアルコール依存症の発症や進行に大きくかかわっている患者さんは多いと思います。最近、外来にやってきた患者さんにもストロング系がきっかけで一気に酒量が増えてしまった人や、短時間に何本も飲んでしまうという方が数多くいます」

ストロング系1本で男性は上限近く、女性は上限超

 倉持院長によると、そもそもアルコールは大麻より強力な依存性薬物で、長期間飲み続けると、欲求が満たされたときに活性化し快感をもたらす、脳の「報酬系」という回路に変化が生じ、次第に飲酒をコントロールすることができなくなっていく。

 厚生労働省が定める、生活習慣病のリスクを高める1日平均の純アルコール(お酒の量×アルコール度数×0・8)の摂取量は、男性が40グラム以上、女性が20グラム以上。500ミリリットル(度数9%)のストロング系1本(36g)で男性は上限に近くなり、女性は簡単に上限を超えてしまう。

 倉持院長は、ストロング系に手を出しやすく、ハマりやすい点についていくつかの理由を挙げる。

▽安く早く酔えてお得

▽若者向けのイメージを作りだしている

▽酒臭さがなく、人工甘味料・香料を加えたり強炭酸にしたりして飲みやすくしている

▽フレーバーを季節ごとに変えるなど消費者の購買意欲を上手に刺激している

▽「プリン体ゼロ」「糖類ゼロ」など健康に配慮しているかのような記載がある

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背景には酒税の問題も