「実際に飲んだら酔いが早く、気分が良くなって、『これだよ~』って思ってしまったんです。ジュース感覚で飲みやすい味に感じた」(加納さん)
すぐに500ミリリットルを買うようになり、数日で一晩に飲む本数は2本、3本と、どんどん増えていった。
飲む量が急激に増えていっていることは自覚していたが、自分で量を減らすことはできなかった。記憶をなくしたりはしないのだが、ついにはストロング系だけでは飽き足らず、ウォッカを混ぜて飲むようになり、“壊れた”飲み方をする日々が長く続いた。
そして昨夏、派遣先の都合で仕事を辞めると、飲み方が一気に崩壊した。朝からストレートでウォッカを飲むようになり、自分の部屋で吐きながら飲み続けた。約半年後、ついにはベッドで血を吐いたのである。
退院後、アルコールの専門外来を受診して依存症と診断され、断酒に取り組みはじめた加納さん。だが、「できるかも」と思えたころにまたストロング系に手を出した。
ストロング系が国内でどれだけ飲まれているか
「ご飯を作りながらちょっとだけ飲みたくなってしまい500ミリリットルの缶を1本だけ飲んで、まったく大丈夫だと思ったから翌日は2本飲んで……。1週間後には朝からウォッカを飲む状態に戻ってしまい、すぐに専門外来に連絡をしました」
それから3カ月。医師の勧めで「断酒会」に参加するようになり、一滴も飲まない日々を過ごしている。
ストロング系じゃなくても、加納さんが依存症になっていた可能性はある。ただ、興味深い論文がある。
慶応大の吉岡貴史特任助教(前福島県立医大臨床研究イノベーションセンター)と岡山県精神科医療センター臨床研究部の宋龍平医師は昨年2月、ストロング系が国内でどれだけ飲まれているかや、問題飲酒との関連についてインターネットで調査。回答のあった約2万8千人のうち、56%がストロング系飲料を「飲んだことがある」と答えた。
さらに、このうち現在も習慣的に飲酒している約1万5千人について調べると、ストロング系を「現在も飲んでいる人」は、「飲んだことがない人」に比べ、健康に悪影響を及ぼす「問題飲酒」に当たる人が2倍以上いることが分かった。