体色は新しい生き方に切り替えるチャンス。※写真はイメージです(Getty Images)

 日々の生活を送るなかで、漠然と将来が不安になることはないだろうか。心理学者の榎本博明氏は、人生の迷いの時期は少なくとも3度訪れるという。新著『60歳からめきめき元気になる人 「退職不安」を吹き飛ばす秘訣』(朝日新書)から一部抜粋、再編集し、解説する。

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 人生において、生き方の再編を求められる時期が、少なくとも3度ある。

 青年期になると、児童期までのような無邪気さに陰りが見え、自我の目覚めと言われるように自意識に苛まれるようになる。友だちと自分の違いを強烈に意識し、ときに「なんで自分はこうなんだろう?」と自己嫌悪に苛まれたり、「自分らしく生きたい」という思いを強めたりする。でも、どんな生き方が自分らしいのかがわからず、「自分らしさって何だろう?」といった疑問、いわゆるアイデンティティをめぐる問いが頭の中の大きな部分を占めるようになる。

 学校を卒業し社会人になることで青年期は終わりを告げることになるが、職業選択を迫られる際に、アイデンティティをめぐる問いとの格闘は最も活性化する。

「どんな生き方が自分にふさわしいのか?」「自分らしい人生にするには、どうしたらいいんだろうか?」といった問いと絶えず向き合い、迷い悩むことになる。これが青年期の出口における迷いの時期、人生最初の迷いの時期である。

 必ずしも自分の適性や価値観にぴったり合う職業が見つかるとも限らないし、現実には大方の場合、受かった会社に就職するしかないわけだが、何とか就職することで、ひとまずは職業選択の迷いから解放される。

 社会に出てしばらくは仕事や職場への適応に必死にならざるを得ないため、アイデンティティをめぐる問いは後退していく。仕事生活が徐々に軌道に乗ってくる20代、そして働き盛りの30代を過ぎる頃から、いわゆる中年期の危機がやってくる。人生2番目の迷いの時期だ。

 心理学者のレビンソンは、この時期を人生半ばの過渡期と位置づけ、自分の生活のあらゆる面に疑問を抱き、「もうこれまでのようにはやっていけない」と感じ、新たな生き方を模索し始める時期であるとする。なぜなら「どんな生活でも自己のもつすべての面を生かし続けることはできないから」であり、「生活構造をつくり上げるには、選択をし、なにを優先させるかを決めなければなら」ず、「どれかを選択するということは、その他の多くの可能性を断念するということ」だからだという(レビンソン著 南博訳『ライフサイクルの心理学(上)』講談社学術文庫)。

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「自分らしい生活」をつくるチャンス