最高検の報告書でも、そのようなT検事の発言は「不適正な取調べ」として指摘している。

 T検事は、検察も「不適正」と認めざるを得ないあらゆる手段を弄して、何とか石川氏に従前の供述を維持させようとし、そのような「不適正な取調べ」によって、ようやく供述調書に署名させたというのが真実の「取調べ状況」だった。

 T検事の捜査報告書と取調べの録音記録とを読み比べてみれば、誰がどう考えても、捜査報告書に記載されている取調べ状況が、実際の取調べ状況と「実質的に相反し」、捜査報告書が「虚偽の公文書」であることは明らかだ。

■検察最悪の組織犯罪

 ところが、最高検はT報告書の中から、録音記録中の同趣旨の発言と無理やりこじつけられなくもないような箇所だけを抽出し、「記憶の混同」で説明できない箇所は見事に除外して、両者が「実質的に相反しない」と強弁した。   

 全く事実に反する捜査報告書を作成して、検察審査会に提出し、その判断を誤らせる行為が「犯罪」であることは、否定する余地はないところであろう。ところが、検察は東京地検特捜部が組織的に行った「誰がどう考えても虚偽公文書作成としか考えられない行為」について、告発されていた特捜部長以下を全員「不起訴」にした。

 その理由として、「捜査報告書の内容は、実際の供述と実質的に相反しない」と言ってのけたのである。

 陸山会事件での虚偽捜査報告書作成事件は、「検察の歴史上最悪の組織犯罪」と言うべき事件である。しかし、検察は、その後、当時の特捜部長など本来責任を問われるべき関係者らを相応に人事上処遇するなどして、組織的に許容した。   

 陸山会事件での捜査報告書が、実際の供述と「実質的に相反しない」と強弁した検察の論理を当てはめれば、今回の森友学園への国有地売却の決裁文書改ざんについても、改ざん前の文書と改ざん後の文書とが「実質的に異ならない」ということにならざるを得ない。   

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検察が起訴する可能性は極めて低かった