この東京地裁判決の批判を受けて、最高検による調査が行われ、その調査結果とT検事らの不起訴の理由についての最高検報告書が取りまとめられた。

 最高検の報告書で、T検事を虚偽公文書作成罪で「不起訴」とした理由とされたのは、(1)T検事が作成した捜査報告書は、取調べにおける石川氏の供述と実質的に相反しない内容となっている、(2)実際にはなかったやり取りが捜査報告書に記載されている点については、その記載内容と同様のやり取りがあったものと思い違いをしていた可能性を否定することができない、という点だった。

 しかし、T検事が作成した捜査報告書に書かれている取調べの状況は、石川氏が密かに録音した実際の取調べでのやり取りとは、全く異なったものだった。

 捜査報告書に記載された状況は、「石川氏は、従前の供述調書の内容について一貫して全面的に認める一方で、小沢氏の供述を否定することを気にして供述調書への署名を渋っていた。そこで、T検事が、石川氏に供述調書作成に至る経緯を思い出させたところ、T検事に言われたことを自ら思いだし、納得して小沢氏への報告・了承を認める供述調書に署名した」というものだ。T検事は小沢氏の供述との関係ばかりを気にする石川氏に、従前と同様の供述調書に署名するよう淡々と説得しているだけで、全く問題のない「理想的な取調べ状況」が描かれていた。

 もし、取調べの経過がこの通りだったとすれば、誰しも、それ以前に作成されていた、石川氏が小沢氏との共謀を認めた供述調書は信用できると判断するであろう。実際にそのような捜査報告書の提出を受けた検察審査会は、「小沢氏との共謀に関する石川氏の供述が信用できる」として小沢氏の「起訴相当」を議決した。

 ところが、録音記録によると、T検事は石川氏に、「従前の供述を覆すと、検察審査員も石川氏が小沢氏から指示されて供述を覆したものと考え、起訴議決に至る可能性がある」などと言って、従前の供述を維持するように繰り返し説得し、「検察が石川議員を再逮捕しようと組織として本気になったときに全くできない話かっていうとそうでもない」などと恫喝まがいのことを言っていた。石川氏が、取調べの中で、「捜査段階で作成された『小沢氏への報告・了承に関する供述調書』の記載は事実と異なる」として、それを訂正するよう求めているのに、そのような石川氏の要求を諦めさせ、従前の供述を維持させようとしていた。

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