――問題は生産力ではなく、需要をどう増やすか、ですか。
藻谷:需要なき生産拡大は値崩れを起こすだけです。(現在主流の)生産に重きを置く経済学の枠組みは時代遅れです。人口成熟のもとでの成長の条件は、現役世代の所得が増え、人口当たりの消費額、時間当たりの消費額が増えることです。
――消費が増えない背景に、政府の財政悪化の影響はありませんか。人々が将来の増税を予想し、将来の生活を心配してしまうからです。
藻谷:影響はあるでしょう。政府が返済計画の立たない借金を積み重ねる姿には、社会の病理を感じます。だから当然ながら財政規模は肥大化してきましたが、内需はほとんど増えていません。さらなる財政拡大を提唱している、最近はやりのMMT(現代貨幣理論)論者たちはその事実を見ていません。
――このまま財政を維持していけるとはとても思えません。
藻谷:日本の経常収支の黒字の規模はコロナ禍が起きた2020年も世界3位でした。これが続いて財政赤字を国内資金で賄えるうちはいいのですが、戦争や天災など何らかの理由で金利が急騰したら、巨大な借金を抱えた政府機能は即刻止まってしまいます。そうでなくとも南海トラフ地震は近未来の発生が想定されていますし、豪雨災害も続くでしょう。いざ本当に財源が必要な時のための備えがどうしても必要です。
■世界に先駆け超高齢化、でも子どもは増える
――いま備えるべきことは何ですか。
藻谷:やれることはたくさんあります。たとえば自然エネルギーや、国内産の食料・飼料の生産を増やして自給率を上げて、輸入額を抑えることです。日本の農業がまだ試していない技術革新の材料はいっぱいあります。世界には降水量、日照量、土地などの好条件がそろわない国が多いなかで、実は日本にはそのすべてがあります。現在4割ほどの自給率を6~7割にすることは十分可能です。それに生産年齢人口が減ったとしても、AI(人工知能)とロボットによる省力化でこれも乗り越えられるはずです。