今回の東京高裁判決が憲法を根拠に「差別されない人格的利益」を認めたことは、指宿弁護士のいうように今後、部落問題以外のさまざまな差別の問題をめぐる訴訟などにも波及していく可能性が高いといえそうだ。

 一方で、高裁判決による出版や公表の禁止が地名リスト全体に及ばず、原告が関係する都府県に限っての禁止にとどまったことは、救済の対象を原告一人ひとりの個別の被害にとどめざるを得ないという裁判制度の限界を示したともいえる。

 原告の片岡明幸・部落解放同盟副委員長は「出版差し止めが認められない県が出てきてしまったことは、『差別を包括的に禁止する法律がないから、原告がいない県にまで拡大はできない』と裁判所が言っているということだと思う。解放同盟としては、この判決を足がかりに、国会で差別禁止法をつくるように運動を強めていきたい」と述べた。

 被告の出版社経営者は高裁判決について「いくらでも悪用可能な恐ろしい判決だ。上告はするが結論は期待していない」とのコメントを発表した。

(朝日新聞編集委員・北野隆一)

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