110周年を表す漢字1字を尋ねると、花組・柚香は「煌」、星組・礼は「進」、雪組・彩風は「繋」、宙組・芹香は「恋」、月組・月城は「輝」と答えた(撮影/MIKIKO)
110周年を表す漢字1字を尋ねると、花組・柚香は「煌」、星組・礼は「進」、雪組・彩風は「繋」、宙組・芹香は「恋」、月組・月城は「輝」と答えた(撮影/MIKIKO)

■「ベルばら」も上演


 5月からの宙組はミュージカル「FINAL FANTASY XVI」を上演。世界的人気を誇るロールプレイングゲームシリーズの最新作が舞台となって登場する。今年6月、宙組トップスターに就いた芹香斗亜(せりかとあ)もゲームのファンだと言い、「心躍る演目」と笑顔がはじける。どんな舞台になるのか、注目だ。


 そして来夏、「ベルサイユのばら」が大劇場に10年ぶりに帰ってくる。フランス革命をテーマにした池田理代子の同名漫画が原作で、宝塚最大のヒット作だ。1974年の初演から再演を重ね、累計500万人の観客を動員した。


 上演は雪組による「フェルゼン編」。王妃マリー・アントワネットへの思いを貫く貴公子の愛の物語が描かれる。雪組トップスター彩風咲奈(あやかぜさきな)は、13年の雪組公演でも新人公演でフェルゼンを演じた。いま、再び挑めることに「幸せしかありません」という。「今の時代だから届けられるベルばらを」と語った。


■110周年の漢字は


 オリジナル作品あり、映画や漫画の舞台化、ゲーム作品とのコラボレーションあり。この多彩さが宝塚らしさだ。


「では、110周年のテーマを漢字一文字で表すと?」


 会見で記者が5人に投げかけた。無茶ぶりですみません!


 雪組の彩風が「伝統作品を受け継ぐ」ので「繋(ぐ)」と言えば、花組の柚香は演目タイトルから発想を広げて「煌(めく)」。星組の礼は躍動感ある作品で前に進むとの思いを込めて「進(む)」。宙組の芹香は宙組に恋してもらえるように「恋」とおちゃめに。月組の月城は初舞台生を迎える舞台なので、「明るくフレッシュな魅力を届けたい」と「輝(く)」と答えた。


 彩風、芹香は93期生、礼、柚香、月城は95期生。当意即妙の返しにもカラーや人柄がにじむ。


 さて、タカラジェンヌの素顔が垣間見えるとあって、ファンが心待ちにする行事がある。それが10年に1度の大運動会で、次回は来年10月16日、大阪城ホールで催される。


挨拶する宝塚歌劇団の木場健之理事長。「創業からの精神『清く正しく美しく』を改めて心に刻み、みなさまに愛していただける価値のあるものを生み出していきたい」と語った(撮影/MIKIKO)
挨拶する宝塚歌劇団の木場健之理事長。「創業からの精神『清く正しく美しく』を改めて心に刻み、みなさまに愛していただける価値のあるものを生み出していきたい」と語った(撮影/MIKIKO)

 宝塚歌劇団にとって来年はまさに記念イヤーだ。宝塚の温泉地で始まった女性たちの歌劇は戦争や阪神・淡路大震災といくつもの苦難を経て、歴史を刻んできた。コロナ禍では20年春から公演の中止が相次いだ。1組およそ80人で舞台をつくり、力強い群舞や熱く抱き合う恋愛シーンが見せ場。稽古や公演の難しさがしのばれる。


 来年は次の10年、そして200周年への一歩でもある。タカラジェンヌ一人ひとりが伝統を繋ぎ、煌めき、輝き、前へ進む。観客たちは新たな恋に落ちるにちがいない。(朝日新聞記者・河合真美江)

AERA 2023年7月31日号

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