球界関係者は複雑な表情を浮かべる。

「球宴は2試合もいらないという声が聞かれますが、これだけ集客できるコンテンツはなかなかない。NPBの貴重な収入源です。球宴はかつて1年に3試合行われていましたが、選手会の要望で89年以降は年2試合が主流に。東日本大震災の復興支援の側面などから11~13年は3試合行われましたが、14年以降は2試合制で定着しています。年1試合に減らした時、補填する財源がなかなか見つからない。2試合制を維持したままで、球宴2戦目からリーグ戦再開まで3日以上空けるなど選手の疲労を考慮して、日程を見直すのが現実的でしょう」 

 野球の本場・米国メジャーリーグのオールスターは年に1試合しか行われない。今年は現地時間の7月11日にシアトル・マリナーズの本拠地であるT-モバイルパークで22年ぶりに開催された。メジャーでは「オールスターウィーク」と銘打ってイベントが行われる。有名OB選手のサイン会や写真撮影、トークショー、子供を対象にした野球教室のほか、新しいイベントとして、歴史的黒人大学(HBCU)の学生選手によるオールスターゲーム「HBCUスウィング・マン・クラシック」が行われた。全国的に知名度が高くないが能力が高い選手にスポットライトを当てることが目的で、試合の内容はハイレベルだ。メジャーの各球団のスカウトも多く集まった。メジャー各球団の若手成長株が集う試合も開催。日本の「ジュニアオールスター」に近い。そして、ホームラン競争を行った翌日にメインイベントであるオールスターが開催された。

 米国の通信員は、日本の球宴との違いをこう指摘する。

「メジャーもファン投票で選出される方式ですが、日本よりシビアですね。過去の実績や応援している球団だからという理由だけでは選手を選ばない。ただ、問題点もあります。選ばれても故障を理由に出場辞退する選手が以前より増え、今年からインターリーグ(交流戦)で全球団と対戦する方式となったので、日本と同様にオールスターの新鮮味がなくなっている。近年は視聴率も落ちています」

 米国ではオールスターに限らず、野球人気の低下に危機感を募らせている。日本も決して対岸の火事ではない。選手たちに掛かる負担を考えた上で、魅力あふれる球宴のありかたを検討する必要があるだろう。 

(今川秀悟)