【2】過去、三冠王7人中6人が翌年もタイトル獲得の「成熟」ぶり 

 三冠王翌年の成績を、過去7人11度の成績と比較してみた。明らかな違いが見て取れる。74年・王貞治(巨人)、85年・落合博満(ロッテ)、85年・バース(阪神)は翌年も三冠王を達成しているのだから、成熟した打撃を誇っていたことが分かる。

 それ以外、65年・野村克也(南海=現・ソフトバンク)、82年・落合博満(ロッテ)、84年・ブーマー(阪急=現・オリックス)、04年・松中信彦(ダイエー=現・ソフトバンク)にしても、翌年になにがしかのタイトルを獲得している。野村、松中などは二冠王だ。

 87年・落合はロッテからセ・リーグの中日に移籍した1年目。それでも初見の投手を相手に打率・331の高打率を残している。1人、翌年に成績を落としているのは38年秋・中島治康(巨人)。38年春秋を合算しても成績は落ちているが、戦前のものであり、あまり参考にならない。 

【3】「極端に三振が多い」村上をどう見るか?          

 村上の先達との違いは、三振が極端に多いことである。試合数が違うとはいえ、実に2倍から3倍を喫している。

 三冠王を狙える強打者の1番の特長は本塁打を打てること。本塁打に伴い、打点を稼げる。バッテリーは本塁打を打たれまいと、際どいコースを攻めてくるので四球が増える。打数自体は減るが、打てる球を確実に安打して、打率を上げる。だから、積極的に初球からバットを振る「外国人三冠王」に比べ、「日本人三冠王」は安打数が少ないのだ。

 村上は、今季シーズン半ばにして108三振、昨年の128三振に迫る勢いである。自身19年のシーズン184三振(セ・リーグ最多)を22年は128三振に減らして、三冠王をつかんだ。「三振も凡打も1アウトに代わりなし」という考え方もあるが、先述のごとく、他の三冠王はみな三振が少ない。

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復調の兆しも