撮影:小森正孝
撮影:小森正孝

最初の写真集は犬だった

 これまでに小森さんが出した写真集や著書(共著も含む)は5冊。

 ただ、意外なことに、2005年、最初に出した写真集『Stroll road in Europe』(新風舎)のテーマは犬だった。

 大学を卒業後、「撮影機材にお金がかかりすぎる」と、風景写真家となることを断念した小森さんは、大阪の印刷会社に勤めながら、スナップ写真を撮影した。

 撮影した写真を整理すると、犬やの写真がたくさんあった。人見知りする性格なので、人を撮りたいと思ってもなかなか声をかけられず、結果的に犬や猫にレンズを向けることが多かったという。

「犬だったら、ぼくみたいなわけのわからない小僧でも『撮らせてください』と、声をかけやすかった。公園とかにいた猫も撮影した。そんなわけで、まず、犬の写真集を作ったんです」

撮影:小森正孝
撮影:小森正孝

 ところが、会社の仲間に写真集を見せると、評判は芳しくなかった。

「みんな猫派だったんですよ。猫の写真集を作ったら買ってくれると言う。それじゃあ、猫の写真を撮ろう、と思い立った。そうしたら、どっぷりハマっちゃって」

 12年、印刷会社を退職して、「猫写真家」として独立。故郷の一宮市に戻った。

「ただ、『猫写真家』になったといっても、東京と違って、一宮ではそんな肩書は全然通用しない。仕事がなかったので、ひたすら猫の写真を撮影した」

 撮りためた写真をNEKO-EXPO(ネコエキスポ)が主催する公募展「NEKOIZM(ネコイズム) 2014」に応募すると、見事入選。その副賞として15年、写真集『ねころん』(KATZ)を出版した。

「このころから小金を稼いだら、猫を訪ねて全国をまわるようになりました。あそこに猫がたくさんいるぞと、うわさを聞くと、行ってみた」

なぜ寺や神社に猫が多いのか

 とはいっても、「うわさの猫で有名な場所」に頼って作品を撮るのは気が引けた。そこから少し離れた場所を訪れた。

「有名な場所で撮影すると、『この子(猫)はあそこで撮ったんだな』ということが、わかる人にはすぐにわかってしまう。でも、そこを外して、1週間滞在しても、まったく撮れないことがある。がっかりして、有名な場所に心が傾いたりする。そんな逡巡をしながら、あちこちを訪れました」

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