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小森正孝さんは全国各地にある、いわゆる「猫神社」「猫寺」を撮影し、4年前から雑誌「猫びより」(辰巳出版)で連載してきた。
猫たちが自由に闊歩(かっぽ)する境内。鮮やかな朱塗りの建物を背景に石畳に座る猫。屋根のすき間でのんびりと昼寝をする三毛。かわいい猫たちが身を寄せる山奥の寺もある。
連載「神様・仏様・お猫様 神社仏閣の猫」には、猫にまつわる伝説のほか、住職や宮司と猫たちのエピソードがふんだんに盛り込まれている。
完全に赤字の撮影
今、インターネット上には全国の猫好きが発信した猫神社や猫寺の情報がたくさんある。しかし、単に猫が多い神社仏閣を取材して雑誌に掲載するわけにはいかないという。
特に注意を要するのが、そこにいる猫と寺や神社との関係だ。
「たくさん猫がいたとしても、それが野良猫だったりすると、写真を公開したとき、問題になりかねません。『あの寺や神社だったら安心して猫を捨てられる』と、考える人が出てくる可能性があります。なので、寺や神社の人がきちんと世話をしている猫なのか、話を聞いてから写します」
基本的に下見を行い、撮っても大丈夫なことを確かめたうえで、取材を申し込む。
「下見では読者を引きつける建物や風景があるのかも確認します。そこに猫がどういう感じで暮らしているのか、自分の目で見ないと、判断できません」
そんなわけで、撮影の効率は非常に悪いと漏らす。
「例えば、東北とかに下見に出かけて、それから取材をするので、もう完全に赤字です。同業者の人からしたら、そんな取材はするな、と怒られそうです」
小森さんは1976年、愛知県一宮市で生まれた。大阪芸術大学で写真を学び、風景写真家を目指した。
「なので、どこまでいってもぼくの作品のベースは風景写真だと思っています。桜や紅葉、雪をバックに猫を写したい。ここに猫が来てくれたらいいなあ、と思って2日くらい待つ。イメージどおりの場所に猫が来てくれたら、よっしゃあー、っ感じでシャッターを切りますが、猫が来ないときはしょうがない。がっかりして帰ります」
ところが、連載の締め切りに間に合わなくても、また撮りに行ったりする。
「そうなると、もう趣味みたいなものです」