ゴーン氏は、逮捕・起訴された19年3月期の5位を最後に、ランキングから姿を消した。もともと逮捕・起訴された理由の一つに、有価証券報告書に記載する報酬の額を実際よりも少なく見せかけた疑いがある。

 坂田課長によれば、役員報酬は、かつては足元の業績よりも、その人が携わった過去の功績に報いる面が大きかったという。

「業績に連動した報酬体系を導入する企業は今ほど多くありませんでした。退職慰労金などを通じて過去の功績に報いる部分が大きく、その結果、足元の業績とは関係なくランキング上位に入ってくる役員が目立っていた印象があります」

 10年3月期にランキング4位だった東北新社創業者の植村伴次郎氏(故人)や、13年3月期に8位だったITシステム・サービスを手がけるフォーカスシステムズの創業者の一人、東光博氏らはそれに当てはまるだろう。

 退職慰労金は取締役や監査役など役員を務めた人が退職する際に払う慰労金のこと。フォーカスシステムズの東氏は報酬総額4億8千万円のうち、退職慰労金が4億6300万円を占めた。

 記事では紹介しきれないが、歴代のランキング上位には、海外出身の経営者のほかに、大東建託の多田勝美氏(11年3月期に3位)やカシオ計算機の樫尾俊雄氏(12年3月期に2位)、フジッコの山岸八郎氏(14年3月期に7位)ら、創業者や「中興の祖」と呼ばれるような顔ぶれが目立つ。いずれも退職慰労金の比重が高い。

 15年3月期にゴーン氏を抜いて1位となったオリックスの宮内氏も、報酬総額54億7千万円のうちの44億6900万円が退職慰労金だった。

 だが前出の坂田課長によれば、こうした傾向が目立って変わったのは18、19年頃という。

 実際に過去のランキングからは、この頃を境に、上位者の報酬総額のうち退職慰労金の占める割合は徐々に小さくなり、代わりに基本報酬や賞与、さらにストックオプションの比重が大きくなっていることが見て取れる。

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外部からは分かりにくい