日本企業の役員報酬が増えている。欧米の企業に比べて報酬は低いと言われてきたが、業績に応じて増やたり、株式購入権(ストックオプション)など「非金銭型」の報酬を払ったりする企業が多くなったことなどが理由だ。企業の立ち上げや業績の引き上げといった過去の功績だけでなく、足元の実績も反映されやすくなっている。
1億円以上の役員報酬を得ている上場企業の役員を有価証券報告書で開示するよう求める制度は2010年3月期に始まった。東京商工リサーチは当初からその集計や分析を行っている。同社情報部の坂田芳博課長は言う。
「制度開始当初は、企業の側も他社の役員報酬の水準がよく分かりませんでした。『もらい過ぎ』といった批判を恐れるなど高い報酬を払う企業は限られていたことが分かります」
同社によると制度が始まった10年3月期のトップは日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏だった。この期に報酬総額が10億円を超えたのは、14億3900万円だったゴーン氏だけだ(ゴーン氏の報酬の額は19年5月発表の会社訂正分を反映。以下や表も同じ)。
ゴーン氏は、日産自動車が経営危機に陥った1999年から約20年にわたって同社の経営を率いた。ランキングでは、ゴーン氏は14年3月期まで5年連続でトップ。翌15年3月期にオリックスの宮内義彦シニア・チェアマン(14年6月まで会長兼最高経営責任者)、続いて16年3月期、17年3月期にソフトバンクグループのニケシュ・アローラ氏(16年6月まで副社長)にそれぞれ首位の座を明け渡しこそしたものの、18年3月期には4年ぶりに1位に返り咲く。東京商工リサーチの坂田課長は言う。
「ゴーン氏に対しては、日産を『V字回復』させた功績もあり、当時はそれでも『報酬が少ないのでは』という声もありました。ところがその後、日産の業績が減速していくと、反対に『多すぎる』との見方も強くなっていった経緯があります」