前出のカブトムシはもちろん、子どもたちが大好きなクワガタも、成虫は広葉樹(クヌギやコナラ、ヤナギ)の樹液をエサにしている。樹液がたくさん出ていて昆虫が集まる広葉樹の木は採集家の間で「樹液酒場」と呼ばれ、そうした木に適切な時間帯に行くと、一度に複数の昆虫を見つけることもできる。樹液に集まってくる虫を見つけて捕まえる方法は「樹液採集」と呼ばれている。
■メスのセミは鳴かない
ちょっと昆虫に詳しい人には周知の事実だが、セミで鳴くのはオスだけだ。オスのセミは腹部に「発音筋」を持っていて、鳴くときはこの筋肉を素早く伸び縮みさせる。すると、この筋肉と結びついた膜がふるえて音が出る。セミの腹部は、ギターやバイオリンのように空っぽの箱のようなつくり(共鳴室)になっていて、膜のふるえは共鳴室の空気も同時にふるわせるので、音が大きくなる、というわけだ。
成虫のセミを捕まえるときには、セミがいる場所までゆっくり、音を立てずに近づくことがポイント。セミに手が届く距離まできたら、すばやく網をかぶせるか、素手でパッと捕まえる。虫取り網以外には双眼鏡があると、高いところにとまっているセミも見つけやすいので便利だ。
このときに注意したいのは、セミのおしっこ。セミはびっくりしたときなどにおしっこをする。昭和を生きた保護者なら、一度や二度はかけられたことがあるのではないか。もちろん、かかったからといってとくに害があるものではないのでご安心を。
もう一つ。地域によって、天然記念物に指定されているセミがいる。例えば、新潟県能生、茨城県片庭、千葉県鶴枝の3つの生息地のヒメハルゼミがそれだ。天然記念物は採集が禁止されているので、注意してほしい。
■昆虫の「心臓」は背中にある
昆虫には、人間と同じような心臓はない。背中に「背脈管(はいみゃくかん)」という一本の管が通っていて、これが心臓の役割を果たしている。昆虫の血液(血リンパ)は背脈管を通じて体の後ろから前へと送られ、背脈管からしみ出して組織のすき間を通り、ふたたび背脈管にもどってくる。このような血管のしくみを「開放血管系」と呼ぶ。