応用コースの実習。柏の葉キャンパスの圃場で、豆類の播種、サトイモの植え付け、ジャガイモ圃場の除草、ニホンナシの摘果、巨峰の管理を行った
応用コースの実習。柏の葉キャンパスの圃場で、豆類の播種、サトイモの植え付け、ジャガイモ圃場の除草、ニホンナシの摘果、巨峰の管理を行った

社会人が学び直すリカレント教育には、さまざまな学びの場がある。そのなかでも60時間以上を受講する履修証明プログラムは、大学院だとハードルが高いけれど、しっかり学びたいという人におすすめだ。その一例として、農業と福祉の連携「農福連携」を学ぶ千葉大学のプログラムをAERAムック『大学院・通信制大学2024』で取材した。

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■農業と福祉をともに学び、人脈も広がる履修証明プログラム

 千葉大学は、農業技術教育を担う環境健康フィールド科学センター(柏の葉キャンパス)で農福連携を学ぶ履修証明プログラム「多様な農福連携に貢献できる人材育成プログラム」を2019年にスタートした。受講しやすいよう考慮し、オンラインの双方向授業やオンデマンドで空き時間に講義を視聴することもできる。

 農福連携は、障がい者が農業を通じて社会との関わりを広げるための取り組みだ。農業分野は人手や後継者が不足し、一方で福祉分野では就労機会に恵まれない障がい者が多い。このプログラムを担当する野田勝二助教は「農業という私たちの得意分野を生かして福祉分野と連携し、生活の質(QOL)の向上や生きがい創出につなげるプログラムです。福祉と農業が抱える課題は共通するところが多く、農福連携には誰でも活躍できるフィールドがあります」と話す。

導入コース「屋内緑化の理論と実際」の講義。観葉植物の挿し木と種まきも体験した
導入コース「屋内緑化の理論と実際」の講義。観葉植物の挿し木と種まきも体験した

 障がい者は、農産物を育てながら自然と触れ合い、収穫の喜びを体感することができる。仕事をしたいが就業していない障がい者はかなりいると見られ、農業関係者からは期待の声が寄せられている。また最近では国が、高齢者や困難を抱える若者なども含め多様な人たちが参加する「ユニバーサル農園」で農業体験をして、社会的課題の解決につなげる動きを後押ししている。

 プログラムには導入、応用、園芸の3コースがあり、受講生は社会人が多い。純粋に農福連携を学びたい人だけでなく、障害福祉サービス事業所、農家や農業法人、障がい者が就労する特例子会社を持つ企業などからも通ってくる。

 農福連携に長年携わる吉田行郷教授は「一口に農福連携といっても多様な取り組みがあり、多様なバックグラウンドの方たちが受講しています」と話す。

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農福連携では、障害の特性に合った作業を細かく分けて考える