「農福連携のプログラムでは、大企業にいた人を始め、いろんな経験を持った人の声を聞くことができます。そういう意味でもリカレント教育はすごく大切です。学校の先生や銀行員の人など、農業や福祉にこれまで関係がなかった人にも入ってきてほしい。そこからまたいろんな知恵が出てきます」(宇野さん)
昨年応用コースを修了した今村直美さんは、千葉大学園芸学部園芸別科を卒業後、生産者と消費者のコミュニティーによるCSA(Community Supported Agriculture:地域支援型農業)に取り組んできた。福島県郡山市の土水空(どみそら)ファームでは障がいのある人たちと農業を通して自立訓練に取り組み、CSAや地域交流活動を幅広く行い23年3月に退職。現在は千葉県我孫子市の川村学園女子大学で学生たちに畑で農業を教えている。
リカレント教育は、これまでの自分について振り返るいい機会になったと今村さんは話す。
「学び直しで知らなかったことを新しく採り入れて、リフレッシュできました。CSAは日本ではまだ広がっていませんが、地域の農業を支えるだけでなく、福祉施設と消費者、都市部と農村部をつなげることもできる仕組みで、何らかの形でこれからも関わりたいと思っています」
このようなさまざまな思いやバックグラウンドを持つ社会人が、履修証明プログラムで出会い、農福連携の可能性を広げようとしている。農産物などを販売するイベント「ノウフクマルシェ」も、環境健康フィールド科学センターで、月1回のペースで開催していて、プログラムの受講生や修了生、近隣住民たちの交流の場となっている。
(取材・文 福永一彦)
野田勝二 助教
のだ・かつじ/千葉大学環境健康フィールド科学センター助教。2000年岐阜大学大学院連合農学研究科博士課程修了。2007年から千葉大学助教。研究テーマは園芸を活用したヒトのQOL向上など。
吉田行郷 教授
よしだ・ゆきさと/千葉大学大学院園芸学研究院教授。東京大学農学部卒。1985年農林水産省に入省し、総括上席研究官、企画広報次長などを歴任。2021年から現職。