「農福連携では、障害の特性に合った作業を細かく分けて考えます。通常、農家は種まきから収穫まで一人で作業をやるわけですが、障がい者には、その障害特性から得意な作業もあれば、苦手な作業もあるので、一人ひとりの得意な作業を見極めて分担を決めていきます」(吉田教授)
「品目によって難易度に差があり、たとえばアスパラガスのようにある程度の大きさに育ったものだけを収穫してあとは残していく作物もあれば、タマネギのようにトラクターで畑を掘り起こしてから、みんなでいっせいに拾って集める作物もあるので、それぞれで対応が異なります。このように、農業と福祉の両方について多様な理解が必要になるので、さまざまな分野の講師をそろえています」と吉田教授は説明する。
野田助教も「農業には総合的な能力が求められ、あらゆる学問が必要です」と強調する。
「生産だけでなくパッケージデザインや販売のしかたも大切な要素になるので、マーケティングやブランディングが得意な人も活躍できます。農福連携という大きな枠組みの中で、自分の能力を生かせる場を知るために、全体を網羅した導入コースから始めるようにすすめています」(野田助教)
■現場で活躍している人たちと直接話をし、ネットワークが広がる
導入コースを修了して応用コースを受講中の川添公貴さんは、中小企業向けのIT支援をする有限会社ケーズオフィスの代表が本業だ。千葉県内で減農薬の米づくりもしているが、人手不足を実感し、農業と福祉をつなげることができればという思いで学んでいる。
「導入コースでは最初、午前中に講義を受けて午後から農作業をしました。たとえば看護学を始め、これまで触れる機会がなかった多くのことを知ることができ、それがすぐに役立つので自信がつきます。農福連携の現場で活躍している人たちとも直接話をして、ネットワークが広がっています」(川添さん)
応用コースを修了した濵崎由紀子さんは、受講中に知り合った福祉事業所の代表に誘われて保育士から転職した。