「決勝に残れるか危うかったのですが、もう1回このルーティンを泳げるチャンスがもらえたので『もうここまできたらやるしかない』という気持ちでした」(安永)
比嘉も「最後まで絶対あきらめないぞ」と心に決め、中島コーチも決勝に進めたことに意味を見出していた。
「一歩間違えれば予選敗退だったので、12位に残れた時点で、ある意味運を持っている選手だなと感じました」
デュエットTRの決勝は予選の2日後となる16日だが、安永と比嘉は16日午前から行われたチームTR予選にも出場している。予選から決勝までに2人がデュエットの練習を行えたのは約3時間半で、DDを確実にとるため中島コーチと共に手を尽くした。
中島コーチに対して2人が伝えたのは、「何が何でも私達は難易度を下げずに挑戦したい」という強い思いだった。2人は予選後、難度を判定するテクニカルコントローラーにベースマークになった原因を聞いており、中島コーチは「ベースマークにならない見せ方を準備しました」と語る。安永も「演技を作り直したぐらい構成を変えた」という。
「今の自分達の実力でどれだけ正確にこなせるか、しかも難易度を予選から落とさずに作り変えられるか、そこをすごく工夫しました」
「高難易度の技を速いカウントでこなそうとしていたのですが、速いカウントになると少しおろそかになってしまう部分があったので。きっちり技をこなすために半カウントでやっていたものを1カウントにしたりして、今までより早く潜って長く水中時間をとりました」(安永)
決勝で最初の演技者として登場した安永・比嘉は、「ミステリアス」をテーマにしたルーティンを泳ぎ切った。予選の苦い経験からハイブリッドを正確に泳ぐことを強く意識したためか、予選より0.2高く申請したDD34.30は減点されることなくそのまま評価された。得点を確認した2人は、歓喜の表情で中島コーチと抱き合っている。決勝は予選上位の国が次々とベースマークをとられる荒れた展開となり、最初に泳いだ日本が最後まで首位を保った。