安永真白・比嘉もえが世界水泳選手権のデュエット・テクニカルルーティンで金メダル
安永真白・比嘉もえが世界水泳選手権のデュエット・テクニカルルーティンで金メダル

 安永真白・比嘉もえが世界水泳選手権のデュエット・テクニカルルーティン(以下TR)決勝で演じたのは、予選12位から金メダル獲得という大逆転劇だった。旧ルールのアーティスティックスイミング(以下AS)では考えられなかった“奇跡”は、安永、比嘉と中島貴子ヘッドコーチの最後まであきらめない気持ちがもたらした結果でもあった。

【写真】昨年6月の世界選手権では吉田萌のパートナーを務めた比嘉もえ

 過去の成績による格付けが順位に反映されがちだったASの改革を目的としたルール改正は、今シーズンから始まった。一つひとつの要素に対して点数がつくフィギュアスケートに近い採点方式になり、試合ごとの演技内容により各国の順位が大きく入れ替わるようになっている。

 新ルールでは、DD(Degree of Difficulty)と称される難度点が勝敗に大きく影響する。演技前に構成を申告し、実際の演技で申告通りに行えないと最小の難易度を意味する“ベースマーク”がつき、大きく点数を失うことになる。フィギュアスケートのように失敗をリカバリーする余地はないためミスは命取りとなるが、DDは順位に直結するため、ある程度リスクがあっても挑まなければならない。

 14日に行われたデュエット・TR予選で、安永・比嘉の採点表にはベースマークが2つついている。2か所ともハイブリッドと呼ばれる高難度の足技で、34.10で申請していたDDは17.20と大きく減点された。上位12組が出場できる決勝に、安永・比嘉はぎりぎりで進出を決めている。

 シンクロナイズドスイミングと呼ばれていた時代から常に世界の上位にいた日本代表デュエットが、予選とはいえ世界選手権で2桁の順位にいるのは信じがたい状況といえる。比嘉は、「予選が終わってから、本当に『どうしよう』という気持ちでいっぱいだった」と振り返る。2人を指導する中島コーチも「予選が終わった時点では落ち込みがすごかった」と明かした。

「すぐ切り替えられる2人なのですが、それでもやはり半日はひきずっていましたね」

 どん底といえる状況から、しかし安永と比嘉は「もうやるしかない」と前を向く。

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「もうここまできたらやるしかない」