処方箋がないと緊急避妊薬は手に入らない、と思い込んでいた私にとって、この発見は驚かずにはいられない出来事でした。さらに、日本だと1万円前後くらいの値段で処方されている緊急避妊薬が、もちろん物価の差はあるものの、当時の物価で100円もしなかったことへの衝撃は、今でも忘れられません。

 薬局で緊急避妊薬を購入することができれば、いざ必要になった時に駆け込むことができますし、念のために日々持ち歩くことも可能になります。WHOが勧告するような、全ての女性が緊急避妊薬に容易にアクセスできる環境の整ったミャンマーの実態を目の当たりにした私は、日本の現状に憤りを感じざるを得ませんでした。処方箋がないと緊急避妊薬が手に入らない日本の現状は、避妊法の一つである緊急避妊薬にアクセスするハードルが高いと言わざるを得ないからです。

「避妊具はつけていたのですが、いつの間にか破れてしまっていたみたいで……。ネットで調べたら、緊急避妊薬があることを初めて知りました。休日でも処方してもらえる病院を必死に探して、ここ(このクリニック)を見つけました」

 とある連休最終日の正午に、勤務先のクリニックに20代前半の女性が一人、緊急避妊薬の処方を希望してクリニックを受診されました。「緊急避妊薬の存在自体、知らなかった」と言う彼女は、インターネットで必死に調べて、避妊法の一つに緊急避妊薬があるということ、そして、日本では薬局では買えないこと、入手するためには処方箋が必要だということを初めて知ったといいます。

 外来の現場で緊急避妊薬をたくさん処方したことで、自分なりに分かったことが2つあります。一つ目は、必要とする女性がクリニックを受診すること自体のハードルの高さです。「仕事を休めないから、休日にも診療しているクリニックを探しました」「勤務の合間や、昼休みの時間に、なんとか受診できてよかった」「夜遅くまで診療してくださって、助かりました」緊急避妊薬を希望して受診された多くの方がこうおっしゃるのです。

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避妊をしていなかったという理由は思ったより少ない