写真はイメージです(GettyImages)
写真はイメージです(GettyImages)

 行政が後押しする「官製婚活」について、結婚したほうがいい、結婚はすばらしいという「価値観の押し付け」にあたるとの批判がある。では、当の行政側はこの声をどう受け止めているのか。行政から婚活支援事業を委託され、AI(人工知能)を活用したシステムを導入して成果を挙げた当事者に、率直な意見を聞いた。

【資料】国立市が開いた婚活パーティーのチラシ

 愛媛県の「えひめ結婚支援センター」は2015年3月にAIによる婚活支援事業を導入し、23年5月末までに1447組から結婚の報告があった。

 AIが利用者の端末上の行動履歴を解析し、「自分を好んでくれるかもしれない異性」に加えて、条件検索では漏れてしまう「希望条件とは異なるが興味があるかもしれない異性」をピックアップしてくれる仕組みだ。

 利用者の行動データの解析で、お見合いにたどり着けない男女の多くに「同じ検索条件に固執し続ける」というネガティブなデータがあり、その問題を解消する仕組みとして導入された。

AI導入後、お見合いに至る確率と成婚者数が伸びた。要は「条件とちょっと違ってもいい人はいる」ことを証明した形だ。

 「えひめ方式」として少子化対策に悩む他の自治体や海外からも先進例として注目され、現在は愛媛以外の四国3県や、富山、山梨など計22県が同様のシステムを導入している。

 だが、こうした行政による婚活支援事業には税金が投入されていることもあって「価値観の押し付け」などといった厳しい声も出ている。こうした声を行政側はどう受け止めているのか。同センターの岩丸裕建事務局長に見解を聞いた。

 * * *

ーー「価値観の押し付け」との声について、率直にどう考えていますか。

岩丸 特に地方での人口減少は大きな社会・経済的課題であり、少子化対策は喫緊の政策課題ですが、結婚するかしないかはあくまで個人の選択であり、個人の自由です。私どもは広告宣伝やSNSなどで社会全体に『みなさん結婚してください』と呼び掛けているわけではありません。利用者の多くは、親やきょうだい、親戚や知人に勧められてこのセンターに登録した、いわゆる婚活に消極的な「奥手な人」たちです。

著者プロフィールを見る
國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

國府田英之の記事一覧はこちら
次のページ
時代に合わせて形が変わっただけ