ーーそもそも、行政の婚活支援を利用する方々には、どういった事情があるのでしょうか。

岩丸 当センターの利用者には、民間の婚活事業者を利用した人がたくさんいます。マッチングアプリを運営している大手の幹部に話を聞くと、1カ月で30人もの異性にアプローチする積極的な人がいるそうですね。ですが、当センターに登録した人には、そのようなアグレッシブな方は少ないです。さらに民間のマッチングアプリを利用した際、男女とも学歴などの条件がハードルになってしまう、特に男性は年収基準から漏れて「門前払い」されてしまった方もいると聞きます。

  さらに、うまくいかないとすぐに婚活をあきらめてしまうケースも目立ちます。そうした、年収などの条件がある民間事業者になじまない人たちをどう支援するか。それが行政の役割だと考えます。

ーー「自己責任」という意地悪な指摘もありそうです。

岩丸 たとえば過疎地で、地域に若い異性が圧倒的に少ない、非正規雇用をのぞんでいるわけではないが、そもそもの仕事が少なく正社員へのチャンスがない。そのような環境に置かれている若い人たちも数多くいます。チャンスが少ない環境にいる若い人たちに、一方的に「自己責任論」を押し付けるのは、あまりに残酷ではないでしょうか。

ーー利用者にとっては、行政による婚活支援という安心感もあるのでしょうか。

 成婚した方々からは、当センターがなければ出会いがなかった、という声を数多くいただいています。また当センターでイベントの手伝いや、お見合いをサポートしているのはすべて無償で活動するボランティアです。金銭的な利益が目的ではないことも、利用者の安心感につながっていると思います。

ーー批判の声はいまだにありますか

岩丸 今はそうした声は寄せられなくなりました。理解を得るために大切なのは「持続性」を示すことだと思います。例えば少し前に流行った「街コン」の主催者と話したことがありますが、既婚者やナンパ目的の人が参加するなどのトラブルもあり、熱が冷めてしまったそうです。一時的に盛り上がっても、長くは続きませんよね。

 また、婚活支援事業を民間委託した自治体もあるようですが、やはりその地域の風土を土台として、熱意のある地域の事業所や人々に助けられながら、独身者に寄り添った活動を地道にやっていくことがなにより大切だと考えています。

(構成/AERAdot.編集部 國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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