その後、Aさん夫妻は、親族に対し、
「『日本はもうすぐ沈没するので韓国に助けてもらわねばならない』とお父様が言っているからパスポートを用意しておくように」
「壺(つぼ)を置いておけば、悪霊を吸い上げてくれる」
などと熱心に話していたという。
2006年から09年にかけては、所属する旧統一教会支部が困窮し、家賃が払えなくなったため、Aさん夫妻宅に隣接する倉庫を改装して支部にした。
「中を見ると、文鮮明、韓鶴子夫妻の写真が飾られ、いかにも旧統一教会の支部という感じになっていました。家賃は支払うという約束でしたが、ほごにされました。電気代の一部だけを支払って勝手に別の場所に引っ越していきました」(Bさん)
倉庫には今も大量の資料が残されている。Aさん夫妻は毎月、旧統一教会から「ゲスト管理表」という日誌を書かされていた。
詳細を見ると月のうち休みは3、4日しかなく、「氏族メシヤ相談会」「天国講座」「伝導集中日」「祝福式」「正副区域長研修」など細かなスケジュールが決められている。そして「目標」には「21K夫婦で努力する」とある。
詳細は不明だが、毎月の献金額は少なくとも2万1千円とすることが目標とされたようだ。あくまで毎月の額であり、他にもまとまった額を求められるときもあったという。
昨年の安倍元首相の銃撃事件以降、親族らの必死の説得もあり、Aさん夫妻は旧統一教会と縁を切った。
「旧統一教会からはカネのことと用事ばかり言われてとても仕事どころじゃなかった。旧統一教会をやめても『寄付して』『カネを貸して』と信者が来ていた。今はほっとしている。しかし、まだ借金の支払いがあって非常に厳しい生活だ。旧統一教会はコンプライアンスは順守しているというが、まったくのウソだと感じる」(Bさん)
Aさん夫妻は6月、加納弁護士らを通じて内容証明郵便を旧統一教会に送付し、返還を求めている。
加納弁護士が指摘する。
「旧統一教会は、教会改革をして今は何ら問題がないと言っている。しかし、2億円を超す献金と借金を高齢者相手に1500万円でごまかそうとしている。旧統一教会の反社会的な姿勢は今もまったく変わっていない」
(AERA dot.編集部 今西憲之)