昨年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件を機に、高額献金などがクローズアップされた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)。殺人罪に問われている山上徹也被告は、犯行の動機について、旧統一教会に入信した母が多額の献金をして家庭が崩壊したことを挙げたという。事件から1年が経つが、こうした多額の献金をさせられた被害者の救済はまだまだ進んでいない。2億円を超える額を“寄付”していた元信者の夫妻は銃撃事件以降、親族らの説得で旧統一教会を抜け、献金などの返還を求めている。
【写真】1987年に霊感商法で売られていた壺や多宝塔などを公表する弁護士ら
旧統一教会の被害者救済に取り組む弁護団の加納雄二弁護士が、和歌山県の元信者宅を訪れたのは今年4月だった。
「旧統一教会に億単位で寄付を強要されたということで被害相談にいきました。自宅と同じ敷地にある倉庫のような場所に案内され、中に入るとあちこちに旧統一教会の本や資料が置いてあるのです。聞くと、『旧統一教会の教会として昔、貸していました』と言うので驚きました」
“教会”の所有者のAさん夫妻は、80代の夫と70代の妻。加納弁護士が、Aさん夫妻が旧統一教会に献金した額や貸し付けた額を確認したところ、2人合わせて約2億5千万円という莫大(ばくだい)な額であることがわかった。
加納弁護士らが作成した「献金一覧表」によると、1998年に「神様の子女になるための条件」として770万円を寄付させられたのを最初に、2021年1月まで確認できるだけで277回。献金状況がわかる旧統一教会側の資料「献金」というカードが残されており、そこには2018年にAさん夫妻が3月末に8回、同年12月末に4回、いずれも500円を払っていた記録がある。旧統一教会が100円単位まで献金を把握していた証拠でもある。
Aさん夫妻の親族のBさんがこう話す。
「このうち5880万円は旧統一教会に貸し付けたものでした。お金をとられたままでの献金や、貸し付けのための借金を重ねて、今は返済に追われて貧困生活です。そこで、教団に返却を求めると『月3万円でどうか』などと言われて、さすがに無理だと断りました。すると『1500万円でなんとかしてほしい』と頼み込まれて、Aさん(夫)が合意書にサインしてしまったのです。高齢のAさん(夫)は、少しでも返ってくればとの思いでサインしてしまいました。旧統一教会が高齢者を丸め込んで、ごまかすやり方に腹が立ってなりません」