『マッチング・アプリ症候群 婚活沼に棲む人々』(朝日新書)を、ジャーナリスト・速水由紀子氏が上梓した。速水氏は同書でマッチング・アプリをやめられない人たちの実態をつづり、彼ら・彼女らを「マッチング・アプリ症候群」と名付けている。「病んでいるかどうかは人それぞれだが、彼らがみんなあるジレンマを抱えていることは確かだ」という速水氏。同書から一部を抜粋、再編集し、マッチング・アプリ症候群の実態を紹介する。
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マッチング・アプリ症候群の定義をここで確認しておく。
1 アプリで真剣に結婚相手、もしくは結婚を前提にした恋人を見つけたいと思っている。
2 登録してから最低1年以上、常時アプリをやっている。
3 次々にマッチングすること、またはそれを期待することが通常運転で生活の一部となっている。マッチングがないと自分に自信が持てず不安になる。
4 今までに15人以上とマッチングして付き合ったがうまくいかず3ヶ月以内に別れてはまた付き合うことを繰り返している。
5 短期の交際と別れを繰り返すのは、自分と相性のいい相手に出会えないからだと思っている。例えば性格や価値観、ライフスタイルなど。
6 「いいね!」をもらうと、その瞬間だけは自己肯定感を得られる。そのために足跡づけを必要以上にがんばる。
7 常時、複数進行が当たり前になる。
8 マッチングがないと物足りなくなり、注目させるためにプロフィールを常時あれこれいじったり、参加コミュニティをどんどん増やしてしまう。
5つ以上の項目に当てはまる人は、程度の差こそあれマッチング・アプリ症候群と言える。一言で言えば目的と手段が少しずつ入れ替わっており、結婚よりアプリで自己肯定感を得ることのほうが重要な目的になっている、ということだ。
そしてこの8つのうち、誰もが1は揺るぎないものだと考えている。
しかし、マッチング・アプリ症候群の人たちが抱えるジレンマとは、実はこの「自分は結婚したい。結婚を前提にした恋人を見つけたい」という前提条件の部分にもある。そんなバカなと思うかもしれないが、人は過去に傷ついた経験があると心の奥底にある恋愛・結婚への本音をなかなか正視できないものだ。