■固定観念からの脱却

 その後、13年になってTBS日曜劇場「とんび」で主演に抜擢。同年に名前の読みを「まさあき」から現在の「せいよう」に変えて再始動した。

「過去の不祥事はたしかに痛手でしたが、どこか上品さを感じさせるのが内野さんの不思議なところ。横浜の由緒正しき寺院の生まれで、最終学歴は早稲田大学政治経済学部卒業。育ちの良さと地頭の良さを兼ね備えた方だけに、多少ハメを外しても品の良さは損なわれなかった」(同)

 その後、「何食べ」での演技が評価され再び脚光を浴びることになった内野だが、同作品は彼の演技に大きな影響を及ぼしたようだ。

「内野さんはインタビューで、これまでは“オスにしかできない表現”を大事にしてきたが、『何食べ』のケンジ役を演じたことで、“オスとはこうあるべき”というものがなくなって、『自分自身、自由になれた』と語っています。固定観念から脱却し、もっと大きな意味での愛情を体感したのでしょう。『春画先生』はヒロインが、内野さん演じる春画研究者に恋心を抱くというストーリー。テーマも春画なので、かなり際どい男女間の愛が描かれることは間違いない。50代も中盤となり、心身や周囲の環境も変化する中で、内野さんがその年齢ならではの“愛”をどう紡いでいくのか楽しみですね」(民法ドラマ制作スタッフ)

 ドラマウォッチャーの中村裕一氏は、内野の魅力についてこう分析する。

「『臨場』でのクセ強な検視官や『JIN-仁-』の坂本龍馬、『とんび』の父親など、00年代後半から10年代にかけて、武骨だけど心根の優しい役を演じさせたらピカイチの存在でした。ただ、もしかしたら、同じようなキャラクターのオファーが続くことで、彼の中に『このままで良いのだろうか』という危機感のようなものが芽生え、俳優として今後どうあるべきか真剣に自分と向き合ったのかもしれません。その意味で『きのう何食べた?』は、彼が導き出した一つの答えだったのではないでしょうか。よく俳優は演技の幅を表現するのに『引き出し』という言葉を使いますが、それを実践できている人は非常に少ない。彼は『剛』に見えて実は『柔』の人。確固たる信念とブレない“芯”を持ちながらも、時代や社会の変化に応じて演技や表現を変えていく“アップデート俳優”として、これからも進化し続けると思います」

 固定観念から脱却したという内野が、どのような演技を見せてくれるのか、楽しみでならない。

(雛里美和)

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雛里美和

雛里美和

ライター。新宿・十二社生まれの氷河期世代。語学系出版社から邦ロックシーンを牽引するライブエージェント(イベンター)を経て、独立。教育からエンタメまで幅広い分野で活動する。

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