1970(昭和45)年、愛知県三好町(現・みよし市)の道路わきで店開きした「すいか茶屋」。当時、収穫時期になると路上に軒を連ねた
1970(昭和45)年、愛知県三好町(現・みよし市)の道路わきで店開きした「すいか茶屋」。当時、収穫時期になると路上に軒を連ねた
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 今年の夏もどうやら猛暑になりそうだ。いまやエアコンなしには夏を乗り切れなくなった。一方、「サザエさん」が描かれた昭和の頃はエアコンもない時代。どんなふうに涼をとっていたのか。漫画「サザエさん」に、夏を快適に過ごすヒントを探ってみた。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。

【写真】大阪・千日前の朝の法善寺横丁。太陽が昇りきる前に打ち水をするのが、各商店の日課

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 梅雨の晴れ間、まだ6月なのにすでに最高気温30度を超える日が続出している。そんな時、あなたの周りでこんなことをつぶやいている人はいないだろうか。

「昔はこんなに暑くなかった。もっとずっと涼しかった」と。

■エアコンはぜいたく品

 実際、今から約50年前の1972(昭和47)年8月の東京の平均気温は26.6度。最高気温が35度以上の猛暑日を記録したのはたったの1日。一方、昨年8月の平均気温は27.5度、猛暑日は6日もあった。昭和世代のノスタルジーではなく、データからも年々暑くなっていることが分かる。

 ただし、当時は現代とは違い、学校や会社にエアコンが完備されていたわけではない。一般家庭においても、エアコンはぜいたく品で、ある家はまれだった。65(昭和40)年のエアコン普及率はたったの2%。一方、22年は91.8%。冷凍機能が付いた冷蔵庫が発売されたのは、62(昭和37)年になってから。氷も、現代のように冷蔵庫を開けば出来ているわけではなく、氷屋さんが売りに来て、切り出して買う特別なものだった。今では当たり前のように冷蔵庫に付いている自動製氷機能も、付属品が発売されたのは、88(昭和63)年からだ。

 にもかかわらず、なぜ昭和の夏は「もっとずっと涼しかった」と言われるのだろうか?

■驚異の「打ち水」効果

 46(昭和21)年から74(昭和49)年に新聞紙上に連載され、昭和の日常が色濃く反映されている「サザエさん」(作・長谷川町子)から探ってみよう。

 53(昭和28)年7月11日付で朝日新聞の朝刊に掲載された漫画では、タラちゃんが通行人に「打ち水」をしている様子が描かれている(実際は「打ち水」をするまねで“エア打ち水”)。

「打ち水」には、夏の早朝や夕方日が暮れてから地面に水をまくことで、地熱が水蒸気となって奪われ、地面の温度が下がる効果がある。加えて、「打ち水」をした地面は、水のかかっていない地面との間の気圧差により風が吹く。科学的にも打ち水をした場合としない場合では、6度近く気温差があることが証明されている。

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