米国置き土産のアンティークカーは、観光の目玉で大活躍。こういうきれいなモノが出現したのは、十数年前だったか(撮影/板垣真理子)
米国置き土産のアンティークカーは、観光の目玉で大活躍。こういうきれいなモノが出現したのは、十数年前だったか(撮影/板垣真理子)

 キューバを訪れたら、歌やリズム、ダンスを聴き、観るだけでなく、体験できる楽しみもある。すでに音楽を奏で、踊りを体験済みの方たちもいるに違いないが、まったく未経験でも楽しめる場もある。例えば首都ハバナの旧市街にある「La Casa del Son」で。サルサをはじめ、数多ある踊りを教えてくれる。ぜひ旅の体験を自らの体内に入れ、持ち帰ってみてほしい。

 かくいう私も、人前で突然歌い始める、という思いがけない体験が始まったのはここキューバだった。彼ら彼女らの音楽に対する愛にはいつも心を動かされる。それは、自らだけではなく、人が学び演奏し楽しむことへの情熱も伴っていて、いつも、「やってごらん」「できるから」と背中を押してくれるからだ。キューバが音楽大国となっている大きな理由の一つがこれなのではないかと思えるほどだ。ぜひ、みっちりとキューバの音楽を楽しんでほしい。毎年6月に開かれるボレロフェスティバルも素晴らしい。今年は5年ぶりに開催され、盛り上がった。

 また、キューバで最も面白いもの、興味深いものに“人”を挙げる人もいる。言葉をさほど話せなくても友達ができるのは、人々の人懐っこさと遊び心満載の性格のおかげに違いない。さらに今は強い味方もいる。スマホの音声翻訳アプリである。これでコミュニケーション成立。ほっとしたようににっこりしてくれる笑顔が素敵だ!

バラデロのとろけるように美しい海。雨が上がった直後に日が差した時の海が一番きれい、とはキューバの人の言葉。これはまさにそれ(撮影/板垣真理子)
バラデロのとろけるように美しい海。雨が上がった直後に日が差した時の海が一番きれい、とはキューバの人の言葉。これはまさにそれ(撮影/板垣真理子)

■自分を取り戻す感覚

 そして自然。ぐるりと海に囲まれた島国で、どこのビーチも美しい。海の楽しみ方はそれぞれだが、ハバナから東へ140キロの細長く突き出たイカコス半島のバラデロ。ここで「オールインクルーシブ」を体験してしまうのも一つの手だ。

 オールインクルーシブとは、 ホテルの宿泊代の中に食べ物やアルコールを含む飲み物、アクティビティーなどの代金が全て含まれているプランのこと。そこそこリーズナブルな価格で贅沢(ぜいたく)な気分を味わうことができる。

 なにより海が美しい! 刻々と色を変えるその姿は、自然の持つ圧倒的な力を思い出させてくれる。熱帯の珍しい植物や鳥の姿に浮世を忘れ、ニュートラルな自分を取り戻す感覚もいい。

 こうしたプチ贅沢が、キューバの観光と経済の復興にも一役買うのなら、それも喜びの一つになるはずだから。(写真家・板垣真理子)

AERA 2023年7月10日号